日本精神科看護協会(にっせいかん)は1976年の法人化から今年で50周年を迎えました。会員の皆様、関係者の皆様の多大なるご支援にこの場を借りて深く感謝申し上げます。
これまでの50年間、さまざまに取り組んできたひとりひとりに寄り添う看護の実践をさらに進めこころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります。
一般社団法人 日本精神科看護協会
日本精神科看護協会は法人化50周年を迎えることができました。日々の活動を通じて支えてくださる会員の皆様、そして関係者の皆様の多大なるご支援に心より感謝申し上げます。
この50年、私たち日精看は、諸先輩方のご指導と励ましを胸に、ひとりひとりに寄り添う看護の実践に取り組んできました。時代の激しい移り変わりとともに、精神科看護職が活躍する場が医療機関内のみならず地域社会へと多様に広がっていくなかでも、私たちがめざすべきものは変わりません。いま、歴史をひととき振り返り、さらなる歩みを続けていきます。
これからも、温かな希望と明るい光に満ちあふれる未来を願って、精神科看護の専門性をより一層高め、連携と共創を大切にしながら、こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります。
法人化をめざした数年来の活動が実を結び、厚生省(当時)から法人認可。前身は1947年発足の「全日本看護人協会」(1958年に「日本精神科看護協会」と改称)。
法人化後初の全国大会(日本精神科看護学術集会・総会)を広島県で開催。「精神科看護の主体性」をテーマに発表、討論、シンポジウム等を実施し、法人格取得の報告や平和公園への記念樹植樹の決定も行われた。同年、地区研修会や講習会等の事業も第1回として開始。 画像:大会の様子や参加者の声が掲載された『日精看ニュース』(1976年6月1日発行号)
俳優の森繁久彌氏が第2回千葉大会で特別記念講演を行い、看護職への応援歌「虹色の花」を日精看に寄贈。大会参加者との感動的な大合唱も。
「看護職員が患者を取り囲み1人が鉄パイプで殴打、死に至らしめた事件。調査委員会を設置するとともに、「全国の精神科看護者に訴える」と題した声明を発表。許しがたい事件であると断じ、再発防止を強く誓った。 画像:『日精看ニュース』で調査等について継続的に報告した(声明は1984年5月1日発行号に掲載)
前年の第11回徳島大会で「精神科看護の定義」作成が提唱され、大きな賛同を得て始動。全国の会員の参加・協力によって進められ、この年、第12回山形大会で制定された。
精神科看護の定義の制定後、精神科看護の倫理的根拠を明らかにし、その社会的責任を果たすため「精神科看護倫理要綱」を作成。第13回福岡大会で制定された。
7月施行の精神保健法に対し、精神科医療の現場で不安と期待が交錯するなか、精神保健従事者団体懇談会(精従懇)としてフォーラムを開催(京都府)。協会理事が看護の立場から意見発表を行った。
会員の学術的な研究活動を支援する目的で研究助成費交付事業を新設。
事務局と研修会会場を兼ね備えたオフィスビルへ移転。以降、2001年日本橋馬喰町のセントピアビル(東京都中央区)を経て、2009年に現在の品川キャナルビル(東京都港区)へ。 画像:『日精看ニュース』1994年8月1日発行号
雲仙普賢岳噴火(1991年)や北海道南西沖地震(1993年)など、相次ぐ甚大な自然災害に対し、日精看は全国会員へ支援の呼びかけや義援金募集などを実施。以降、協会の災害支援はより組織的なものへと発展する。 画像:『日精看ニュース』1995年3月1日発行号
より専門性を追求し質の高い看護を提供するため専門学会(日本精神科看護専門学術集会)をスタート。「精神科救急・急性期看護」「老年期精神科看護」「精神科リハビリテーション看護」「思春期・青年期精神科看護」の精神科認定看護師制度の4分野で、全国4か所で毎年、開催した。 画像:『日精看ニュース』1995年10月1日発行号
毎年開催される全国大会および専門学会には、全国の会員から300を超える研究論文が寄せられるようになり、質の面でも年々向上がみられる状況をふまえて、学術誌の発行を決定した。 画像:『日精看ニュース』(1996年10月1日発行号)には投稿規定全文も掲載
1994年に「精神科認定看護婦・看護士資格制度」(現「精神科認定看護師制度」)が総会で承認、翌年から本格的に養成開始、資格取得者5名が誕生。2025年3月時点で928名となった。2007年、2015年、2025年に制度改正。 画像:2012年に制作した精神科認定看護師マーク
当初は「入会案内」「研修会の案内」「書籍・文献検索」が中心。その後、会員限定ページや看護管理コーナー、市民向け「こころの健康」情報を新設するなどの拡充やリニューアルを重ね、現在の「日精看オンライン」へと発展。 画像:2004年4月時点のホームページ画面
1988年7月1日施行の精神保健法にちなみ「こころの日」と位置づけ、精神疾患や精神障害、こころの健康について普及啓発活動をスタート。毎年、各支部が特色を活かしたイベントを全国各地で開催している。 画像:2006年に制作のロゴマーク、「こころの日」の名称は2007年に商標登録された
全国の会員施設の協力を得て、精神科病棟の開放・閉鎖および患者処遇に関する大規模な実態調査を実施。調査結果は厚生省(当時)の精神保健福祉法施行のための専門委員会に提出され、長期入院や入院形態に関する課題検討の資料として活用された。 画像:『日精看ニュース』1999年10月1日発行号
20世紀最後の全国大会となった香川大会は、法人化25 周年と新たな100年の始まりを記念し、「21世紀の精神科看護をデザインする」を学会主題として開催された。
加害者の精神科病院への入院歴報道等が、精神障がい者やその家族、医療・福祉関係者に与える影響を懸念し声明を発表。厚生労働省へは「重大な犯罪を行った精神障害者に対する施策に関する要望書」を提出した。 画像:『日精看ニュース』(2001年7月1日発行号)に掲載された声明文
法務省の法案に対し、日本看護協会と連名で声明を発表。精神障がい者の健康と社会復帰支援の立場から反対し、法案の問題点を具体的に指摘。保安目的ではなく、地域精神医療体制充実の視点を取り入れるよう求めた。
制定から約15年、精神科医療・看護を取り巻く状況の大きな変容をふまえ、全国会員の意見を広く聴取し改訂案を検討。第29回秋田大会で承認された。
法人化以前から臨床で役立つ書籍を監修・発行してきた日精看による初心者向けテキスト。精神科初任者、看護補助者の研修や看護学生の学習支援に活用された。
30回目の記念大会として行われた静岡大会の主題は「精神科看護における情報管理―情報に関わる個人の権利と情報の保護」。同年4月施行の個人情報保護法を背景に、情報管理の重要性を意識した学会となった。学会初日の夜には法人化30周年記念パーティーも開催された。
患者の安全確保と安心感の提供をあらためて重視する視点から、精神科における医療安全を考えるフォーラムを企画し、11月の医療安全週間にあわせて東京で開催。開催地や開催方法を変えながら現在も継続している。
精神科看護業務遂行の手引きとして1999年から刊行している日精看監修の業務指針。精神科医療の動向にあわせて改訂を行っている。
教育事業強化の一環として、西日本地区の研修機会拡充と会員ニーズに応えるため、研修会を通年開催できる研修センターをホテルレジーナ京都(京都府京都市)に開設。その後、2009年に烏丸ビル(京都府京都市)に移転し、2021年3月に閉鎖。
群馬県で発生した看護師による入院患者の傷害致死事件を受け、日精看は声明を発表。さらに東京と大阪で緊急セミナーを開催した。
全国会員へのよりスピーディーな情報発信を目的としたメルマガ。1年間の試行期間を経て本格スタートした。
精神的に不安定な人や不調を感じる人に向け、看護師のメッセージやアドバイスを盛り込んだパンフレット。「こころの日」のイベントや「こころの健康出前講座」で多くの市民へ配布した。
地域住民のこころの健康への理解促進と精神疾患に関する正しい知識の普及をめざし、精神科看護師を企業・学校・施設等に派遣する「こころの健康出前講座」を開始。規模拡大のため講師の養成にも取り組みはじめた。
日精看ニュースの創刊は法人化以前の1958(昭和33)年。500号を迎えた2002年から『e-nurse』を、2009年からは『Nursing Star』を誌名とするなど、時代や会員ニーズにあわせて誌面の刷新を続 けている。(画像はその一例) 画像(左から): e-nurse(2002-2008) Nursing Star(2009-2010) Nursing Star(2010-2014)
九州・沖縄地区支部間の連携強化をはかり、組織運営や研修会運営を担う共同事務所として、福精協会館(福岡県福岡市)に開設した。
厚生労働省の「自殺予防週間」(9月)にあわせ、一般企業の社員・管理職を対象とした職場でのメンタルヘルスケアをテーマにしたセミナーを東京研修会場で開催。弁護士相談コーナーも併設した。
3月11日の地震発生から3日後、日精看は災害対策本部を設置。支部を通じて被災状況を把握し、支援物資の集約・配送、避難所や重点支援施設等への訪問支援、厚労省要請によるボランティア募集・派遣を実施。会員のボランティア登録は550名を超えた。 画像:全国会員から協会本部へ届けられた支援物資が被災地へ
カタログ通販会社と共同で、精神障がい者の社会参加を後押しするプロジェクト。仕事・収入・やりがい創出をめざす持続可能な自立支援の試みは10年間で15000件超の参加、累積支援額は250万円を突破した。
国の公益法人制度改革により一般社団法人に移行、その際「社団法人日本精神科看護技術協会」から名称変更。移行への取り組みを通じ、本部と支部が一体となった連携強化の重要性があらためて共有された。
災害支援マニュアル作成プロジェクトにより東日本大震災から約3年を費やし完成。マニュアルを活用した「精神科病院における災害対策」研修会も実施した。
「こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります」。全国支部長会議での議論、精神科看護管理者からの意見募集、各地タウンミーティング等の約1年にわたる検討を経て完成。時代を超えて受け継がれ、医療職以外にも理解しやすい点を重視した。
精神障がい者の自立支援として、会員がかかわる当事者の写真表現を「見つけて」「全国に伝える」新たな試みとして始まった。現在は「にっせいかんフォトコンテスト」として継続。 画像:受賞作は日精看ニュースやホームページ、学術集会等で発表・展示された
活動理念を実現するため、2017年度に教育目的を明文化し、あわせて日精看が育成する看護職像を策定。2018年度に公表した。
福島県からの委託を受け、東日本大震災と原発事故で県外避難中の福島県民に対し、避難先を訪問し心のケアを行う事業を各支部の協力のもと開始した。 画像:避難者への訪問時などに活用したミニパンフ
精神科における特定行為研修のニーズ、精神科認定看護師制度における導入の是非、日精看としての方向性などの検討を開始。2026年度から特定行為研修を開講することになった。
フィンランドの母子支援団体が、虐待加害者となる男性の「外傷体験」からの回復に着目し開発した支援ツール「パパカード」。日精看が父親支援の普及啓発ツールとして日本版を完成させた。
障がい児者の在宅支援や重度化・高齢化に対応する拠点として品川区立障害児総合支援施設が開設され、日精看を含む4法人が共同運営した(2022年まで)。日精看はメンタルクリニックや訪問看護ステーション等を担当。
4月に緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルス対策支援本部を設置、「新型コロナウイルス感染症対応指針」を作成。会員施設ではマスクやガウン、消毒薬等の医療資材不足が深刻化。日精看は厚労省へ供給を要望し続けるとともに、長期戦を見据え、感染管理対策情報やメンタルヘルス支援など、会員の不安軽減と業務支援を最優先課題として取り組んだ。ホームページ上に特設ページを開設、医療現場で役立つ情報を日々発信し、メルマガやFacebookなどのSNSも活用するなど情報発信を強化した。 画像:吉川会長はじめ協会役員が緊急メッセージ動画を次々と発信。支部長会議や感染対策に関する意見交換会がオンラインで開催された
協会事業も大きな影響を受け、第45回沖縄大会、全研修会、精神科認定看護師教育課程は中止となった。コロナの終息の見通しが立たず集合研修の継続が困難と想定されたため、京都研修センターを閉鎖し研修会のオンライン化を進め、会員の学びの場を維持するため無料Web研修会も緊急開催した。専門学術集会はオンラインに切り替えて開催した。
コロナ禍で自殺者が急増するなか、厚労省が「こころの健康相談統一ダイヤル」を設置。職能団体が協力して時間外対応を実施。日精看は東京、宮城、愛知、岡山、福岡の5拠点で対応した。
コロナ禍で孤立や不安が増大する社会状況のなか、精神科看護職の専門性を広く役立てる取り組み。全国の支部・会員が各地域でミニリーフレット、動画、ポスター、ホームページやSNS等を通じて精神科看護の知見を届けた。
前回改訂以降の法制度や社会状況の変化をふまえて改正を行い、会員一人ひとりが倫理を身近に考えられるよう小冊子「精神科看護職の倫理綱領とモヤモヤMEMO」を作成・配布した。
活動理念の実現に向けた教育目的や育成する看護職像に必要な継続学習支援を2020年から検討。より体系的な教育システム「精 神科看護職のクリニカルラダー」(日精看版ラダー)を公表し、これに沿った研修会を開始。
医療機関における倫理的な課題は、精神科看護職だけの問題ではなくすべての看護職の大きな課題と捉え、日本看護協会と日本精神保健看護学会の3団体による団体会議を発足。ロードマップを作成し、今後の虐待防止に係る取り組みの強化に関する共同声明を発出するなど、さまざまな取り組みを開始した。
虐待予防には倫理的感受性に基づく看護実践が不可欠であり、精神科看護職がそのロールモデルとなれるよう、日精看が他団体と協力し精神障がい者虐待防止の手引きを作成。あわせて看護教育の仕組みも整え会員へ提供した。
総会等の協会運営をより合理化するため、会員数に応じて選出された各支部の代議員が意見を集約してもち寄り活発な議論を行う代議員制を導入した。
精神科看護の探究を支援する研究システムとして、前年スタートした「共同研究マッチング」につづき、「研究倫理審査」を開始。施設内に審査機関がない会員を日精看が無料でサポートする取り組み。
6月6日~7日に行われた第50回日本精神科看護学術集会(兵庫県)の開催地である兵庫県姫路市において、6月6日夜に50周年記念交流会を開催。
ただいま準備中です。もうしばらくお待ちください。
日本精神科看護協会50周年を迎えて
日本精神科看護協会が創立50周年を迎えられましたことを、心からお祝いを申し上げます。貴会におかれましては、創立以来半世紀の永きにわたり、精神科の看護技術の向上にご尽力頂いたことに深く感謝の意を表します。また、日頃より日本精神科病院協会の事業活動にご理解ご支援を賜り御礼を申し上げます。日本精神科看護協会は、精神科医療の現場で苦慮する事象に対し、現場に近い目線で様々な問題の解決にあたり、前向きな検討をすすめてこられました。この50周年も一里塚に過ぎませんが、これからも新たな精神科の医療を創造していただきたいと願っています。貴協会の益々の発展を祈念して、お祝いの言葉といたします。
一般社団法人日本精神科看護協会50周年を心よりお慶び申し上げます。わが国の精神保健福祉の発展へのご貢献、精神科看護の更なる質の向上へのたゆまぬご尽力に改めて敬意を表します。 少子高齢化の急速な進展により、日本は今、国や社会のあり方の大きな転換期を迎えています。対象者のニーズが複雑化・多様化するなか、あらゆる場ですべての人の尊厳がまもられ、適切な看護を受けられる社会を維持していくために、精神科看護の専門的知識と技術に寄せられる期待は一層大きくなっています。これからも看護の力で人々の健康と暮らしをまもるため、ともに取り組んでまいりましょう。 貴会の益々のご発展と会員の皆さまのご活躍を祈念致します。
精神医療を支える両輪として
法人化50周年おめでとうございます。日ごろより、貴協会会員の看護師のみなさまと私たち精神保健福祉士は、精神疾患や障害を抱える方たちの療養生活上の相談や支援に携わるなかで、密接に連携させていただいておりますことに感謝申しあげます。 本協会では「すべての人に、“コノ邦ニ生キル幸セ”を。」をスローガンに掲げ、精神保健医療福祉の充実に向けて活動しています。貴協会とは、精神医療を支える両輪となり、誰もが精神疾患や障害があっても自分らしく暮らすことのできる共生社会の実現に向け、今後とも相互交流を深めさせていただけますようお願いいたします。
日本精神科看護協会様、この度は設立50周年おめでとうございます。 貴協会におかれましては、「精神疾患(障害)の正しい理解を促進し、スティグマを払拭する」といった我々の取り組みにご賛同いただき、世界メンタルヘルスデーをはじめ様々な形で普及啓発活動を共にしていただきました。 精神科看護に携わる皆さまには、臨床領域はもとより多様なフィールドで専門性を発揮していただき、精神保健医療福祉の患者や家族のみならず、現在困難な状況にある人が信頼を寄せる貴重な存在であり続けていただきたいと切に願っております。 そして引き続き我々と、困難な状況にある人のパーソナルリカバリーにつながる活動にご協力いただけたら幸いです。
日本精神科看護協会50周年記念に寄せて
日本精神科看護協会50周年、おめでとうございます。 我が国の精神医療保健福祉の状況は、精神保健福祉の改革ビジョン等を掲げ、激変の50年だったと思います。その中において看護職の役割は大きく、貴協会は、常にその質の向上への取り組みを実践してこられました。近年では、本協会も含む関係機関に意見徴収しながら、2023年に「精神科医療機関における虐待防止の手引き」を発出されたことは、精神科病院の健全化に向けて重要な指針となりました。 地域共生社会の実現に向けて、今後も多職種で一致団結して取り組んでいく必要があると認識します。本会も貴協会と連携しながら貢献できるよう努力してまいります。何卒よろしくお願い申し上げます。