訪問看護サポート

精神科訪問看護にかかわる皆様へ

これからの日精看は、病院と地域をつなぐ「看・看連携」にも力を入れていきます。

また、精神科訪問看護に関するプラットホームの役割(精神科訪問看護をよりよく動かすための土台のような役割)も担いたいと思っています。

このページや「日本精神科看護協会 精神科訪問看護ツイッター」などで、さまざまな情報を発信するとともに、皆様の声をお聞きしながら、精神科訪問看護に関する政策提言をより積極的に行っていきます。

日精看ニュース 6月号
特集連動企画! 座談会

私たちが考える! 精神科訪問看護で何を大切にすべきか

訪問看護の利用者が増えたいま、精神科訪問看護の質が改めて問われています。
精神科訪問看護が何を大切にすべきなのか。あるべき姿とは――?
精神科訪問看護で活躍する3人の方に、語っていただきました。
(要点をまとめた記事を『日精看ニュース』2023年6月22日号に掲載しています)

東 美奈子(あずま・みなこ)
訪問看護花の森 管理者/日本精神科看護協会 副会長/精神科認定看護師

中薗 明子(なかぞの・めいこ)
公益財団法人慈愛会 笹貫訪問看護ステーション愛の街 在宅支援部長 兼 精神科統括看護部長/日本精神科看護協会 業務執行理事

藤森 祥子(ふじもり・しょうこ)
医療法人社団恵宣会竹原病院 訪問看護ステーションよつば 管理者/精神科認定看護師

東 美奈子(あずま・みなこ)
訪問看護花の森 管理者
日本精神科看護協会 副会長
精神科認定看護師
 

中薗 明子(なかぞの・めいこ)
公益財団法人慈愛会 笹貫訪問看護ステーション愛の街 在宅支援部長 兼 精神科統括看護部長
日本精神科看護協会 業務執行理事

藤森 祥子(ふじもり・しょうこ)
医療法人社団恵宣会竹原病院 訪問看護ステーションよつば 管理者
精神科認定看護師
 

精神科訪問看護で私が大切にしていること

●東 美奈子さん
・その地域にないものをつくること
・スキンシップを使ったコミュニケーション。季節感を利用者さんに届け、お互いに笑顔になれること
・看護師同士のコミュニケーション、連携を密にすること

●中薗 明子さん
・「寄り添う」「相手の立場に立つ」という“暗黙知”の部分を、自分の看護実践をエピソードとして文章化して形にすること
・自己決定支援、「心に届く看護」の提供、「その人らしい生活」

●藤森 祥子さん
・クライシスの時への対応を意識してもらえるように病院や主治医への密な報告や連携
・看護職の視点から「利用者さん中心の見立て」を行い、それをチーム全体でめざすこと
・訪問看護ステーションだけで抱えず、相談支援事業所、地域包括支援センターなどの多機関や民生委員、住民と連携し、協力して支えること

 

目次

■利用者さんとのコミュニケーション
■クライシスを未然に防ぐためにできること
■フィジカルアセスメント力を高める
■家族支援は訪問看護の大事な役割
■「卒業」を意識して、医療から手放していこう
■病院との連携その① 病院スタッフへの報告・地域資源の情報提供を密にしよう
■病院との連携その② 連携はさまざま――病院併設型の場合、独立型の場合
■病院との連携その③ ケースを通じた連携とシステムづくりの両輪で

 

 

■利用者さんとのコミュニケーション

東 美奈子さん(以下、東):私は訪問看護の実践で、忘れられがちだけれども看護職として大事にすべきことは、「てあて」だと思っています。身体の痛いところに手を当てたり、手浴や足浴をするなど、スキンシップを使ってできるケアを展開することで、利用者さんの身体やこころがほぐれていきます。これは看護師のいちばんの強みだと考えています。利用者さんの身体に触れていると必要以上に日々緊張していて身体が凝っていることにも気づきます。

自己決定支援はもちろん大切にしています。自己決定ができないのは、いままで自分で決めた経験がなかったり自分で決めて失敗した経験が多いからだと思います。そういう方が自分で決められるようになるために、体験したり、見て感じてもらったりすることひとつひとつを大事にしています。

また、訪問看護師は、精神疾患でひきこもったり陰性症状のある人に対して、「季節感を届ける人」であるべきだとも思っています。「芽吹いてきたなあ」「夏になってきたなあ」ということを、訪問看護師が介在することで感じてもらう――。福祉職の方でもできるのかもしれませんが、やはりその人の病状や状態を把握したうえで届けることが大事です。過去のつらい経験から、ある季節になると具合が悪くなる方もいます。そのようなことを理解したうえで、季節感を届ける。訪問看護師が届ける意義は、そこにあると感じています。

コミュニケーションでは「無理やり本人のこころをこじ開ける」のではなく、そばにいることで「この人にしゃべってもいいかもしれない」と思ってもらうことが大事です。つまり、しゃべりたくなるまで待つということですね。私が訪問看護に行くと、利用者さんに「あんまりしゃべらないよね」と言われるくらい私自身は口数が少ないです(笑)。スタッフにも「その日の訪問時間、お互いが話す割合の3割以上しゃべらないで」と言っています。そのぐらい看護師が意識をして、“こちらから発信しないようにすること”が、とても大切だと思います。

 

 

■クライシスを未然に防ぐためにできること

:普段、自己決定を支えながらクライシスにならないために、どのようなことに心がけていますか?

藤森 祥子さん(以下、藤森):調子が悪くなった時に、独特の表現で伝えてくる方がいらっしゃいます。たとえば「病状が悪くなってくると、神様が現れる」という利用者さんなら、同じ言葉や表現を使って質問したり、一緒に評価したりすることを心がけています。

クライシスを防ぐには、自分の状態をわかり、それを私たちに伝えられることが大事ですし、私たちも、本人がわかっていない「いつもとの違い」を早く察知できるようにならなければいけません。たとえば、「いつも体調をノートに書いているのに、今日は書いていなかった。ずっと眠っていたのかもしれないし、興奮して眠っていないのかもしれない」というように、ちょっとした「いつもとの違い」の中からさまざまにアセスメントをしています。

:そうですね。部屋の片づけ方とか、洗濯の干し方とか……。私たち訪問看護師は生活の中からアセスメントできる。普段の生活を知っているからこそ、症状の悪化のサインや気持ちの変化に気づくことができるということですよね。

藤森:普段、洗濯物をたたんでいるのに、そのままにしているとか、そういうちょっとした気づきが本当に大事だと思います。

:利用者さん自身もツールを使っていると変化に気づくことができ、利用者さんも訪問看護師も変化がわかりやすいと思います。ツールを使う時に工夫していることはありますか?

藤森:気分や食欲、睡眠が何点と書き込める評価ツールを使っています。自己採点してもらうことで心や身体の調子に早めに気づけるようにして、その理由も話題にするようにしています。「普段は5点なのに、10点だった。病状の変化なのか、それとも友人と楽しく食事をして楽しかったからなのか」というように話しあっています。話題づくりにもつながりますね。

:私は「笑っている顔」から「泣いている顔」までが10種類並んでいるツールを使っています。そこに時間(何分くらいこの状態だったというような内容)も記入してもらいます。入院中からつけてもらって、在宅でもそれを使うようにしています。病院と同じツールを使えるといいですよね。

クライシスプランは、誰がつくることが多いですか?

藤森:最近は、入院中に病院でつくることが増えていますが、つくっていない病院もあります。その場合は、退院支援カンファレンスで話題にして、その場で話を聞きながら簡単なプランをつくり、退院後に利用者さんと生活の状況をみながら更新していきます。

クライシスプランができていない間は、クライシス時に私の携帯に電話してもらって、私から他の人にSOSを伝えていくようにしています。相談支援事業所の人がその役割を担うこともあります。クライシスプランは多機関で共有しています。利用者さんには、電話の横など目につくところに貼ってもらったりしていますね。

:クライシスプランを生活に合わせて変更、更新していくことは、とても大事ですね。

 

 

■フィジカルアセスメント力を高める

中薗 明子さん(以下、中薗):当ステーションは2019年に一般診療科の訪問看護ステーションと統合したことで、精神と身体の両方を看る力が備わっていることが強みだと感じています。主に身体の面で訪問看護を利用している精神疾患のある利用者さんが先日、幻聴が強くなったため、精神のスタッフも加わり、訪問看護を計画しました。特定行為研修を修了した看護師もステーションに配置されています。

藤森:とてもいい体制ですね。精神疾患がある方は、身体の調子が悪くなると、こころの調子も大きく崩すし、不安で検査に行かないうちに、重症になってから病気が見つかることがあります。だから、一般診療科の病院との連携は大事だと思っています。

私は事前に一般診療科の先生に電話で話をして、利用者さん1人で受診してもらうこともありますが、1人だとうまく受診できずに帰ってくることが多いんです。やはり訪問看護師が応援団として同行し、「こういう方で、入院や治療もできます」と利用者さんについて説明し、検査をしてもらうことが大事です。

ヘルパーさんに同行してもらうこともありますが、医師から複数の治療方法を提示された場合に、利用者さんの病状を考慮して、治療法を選ばなければならない。治療法は医療者でなければ想像しにくいですから、結局「看護師や主治医と相談してきます」といって戻ってくることがあります。やはり主治医に質問したり、段取りのための話をしたりするために、訪問看護師が必要だと思います。利用者さんは長い時間待って、ようやく受診したのに結果が出せず、モチベーションが下がることがあります。利用者さんにとっては「この1回」が大切なんですよね。

ただ、同行にはものすごく時間がかかるのに、診療報酬はつきません。その部分は改善してもらえるといいなあと思います。

:そうですね。それから、精神疾患のある人が身体の病気になっても、妄想として片づけてしまいやすいという課題もあります。私が経験した例ですが、「おなかが痛い。背中が痛い。痛いところがコロコロ変わる」と訪問のたびに訴えている利用者さんがおられました。整形外科や内科などには定期的に受診しておられたので、余計に、体感幻覚なのか病気からくる痛みなのか迷っていました。もしかしたら利用者さんが医師に状態を伝えられていないかもしれないと思い、受診に同行して説明しました。いろいろな検査をしても原因がわかりませんでしたが、しばらくたって内科から総合病院を紹介され、がんが見つかり、すでに末期でした。

ですから、まずは私たちが身体をみる力をつけることが大事で、少しでも体調が気になった場合は、専門の医療者につないでいく必要があります。中薗さんの訪問看護ステーションのような体制はいいなあと思います。

中薗:精神科看護師には特定行為研修を受けてほしいと、強く思っています。やはり高齢化にしたがって、糖尿病など身体合併症も増えてきますよね。精神科看護師がフィジカルアセスメント力をつけて、早期発見をして一般診療科につなげば、受診だけで済むかもしれないし、入院しても短期間で済みます。

それから、一般診療科への同行についてですが、やはり利用者さんは医師の説明を受けるときは、不安からパニックになったり、医師の説明がうまく理解できなかったりします。だから、信頼されている訪問看護師が同行し、医師の説明を利用者にわかりやすく伝え、本人の意思を聞くこと。また、医師に利用者さんの生活状況を伝えることが必要だと思うのです。

 

 

■家族支援は訪問看護の大事な役割

:家族支援で工夫していることはありますか?

藤森:私は、家族には、担当ではない別の訪問看護師が対応するようにしています。家族の不安が高かったり、共依存や過干渉などご家族が利用者さんによい影響を与えていない場合は、必ず2人で訪問し、1人が利用者さんに対応している間にもう1人がお母さんの思いを聴いたり、よい行動を引き出していくように働きかけたりしています。

家族には「ご本人の前では言いにくいお話があれば、いつでもご連絡のうえ、訪問看護ステーションに来てください」「私は○○の家族会に参加しているので、もしお話があれば、家族会が終わった後に話をしましょう」と伝えています。利用者さんと一緒に話さなければならないことであれば、利用者さんの担当看護師と、家族に対応するスタッフの2人で訪問し、話をスムーズに進められるようにしています。

中薗:当ステーションも同じように2人で訪問して、利用者さんの担当看護師が別の場所で運動をしたりするなど、家族と離れたタイミングで、家族のお話を聴いています。意識的に、家族の思いを聴くようにしています。家族に居宅支援が入っている場合は、ケアマネジャーから情報が入る場合もあります。

:私の訪問看護ステーションは複数名訪問をほとんどしていないので、訪問看護師が1人で対応します。利用者さんに家族とだけ話してもよいかを確認してから家族とだけ話すこともあります。また、家族から電話で相談を受けることもあります。利用者さんとの話の内容は家族に伝えてよいか本人の了解をとって、お話をしています。お互いに心配していることがあるので、安心感の提供は大切ですね。やはり本人が安定すれば家族も安定するし、家族が安定すれば本人も安定するので、家族支援はとても重要な要素です。家族に安心感を与える看護が必要だと思います。

 

 

■「卒業」を意識して、医療から手放していこう

:みなさん、訪問看護の「卒業」については、どのように考えていますか?

藤森:産後うつの方で大変な時期を脱して「もう、1人で大丈夫」と訪問看護を卒業した方がいました。また、就労が軌道に乗ってきたころに、利用者さんが就労に重点をおきたいと希望して卒業したり……。また、地域生活が順調にいっていたため、ご本人の意向をふまえて、先生とも相談しながら、少しずつ訪問看護の間隔をあけるようにしてから、卒業する方もいました。

中薗:当ステーションでも同じように産後うつが改善した方、就労して自立した方がいらっしゃいます。

:私は誰に対しても常に卒業を意識しておくことが大事で、多少、病状が不安定でも、離れる時期があっていいのではないかと思っているんです。マズローの欲求の5段階でいう「生理的欲求」「安全の欲求」が満たされたとアセスメントできたときには、利用者さんに「卒業を視野に入れましょう」という提案をするようにしています。

愛着の問題や精神症状の不安定さなどリスクをもっている人もたくさんおられるので、全員に卒業すべきということではありませんが、「訪問看護から離れて自分たちの暮らしができる」ということを利用者さんに意識してもらうこと。そして、少しずつ福祉関係者に手渡し、訪問看護はフェイドアウトしていくことが大事だと思っています。むしろ訪問看護師の「もし具合が悪くなったらどうしよう」という不安が、卒業を阻んでしまうことが往々にしてあるように感じることもあります。訪問看護師は自分のアセスメント力を信じて、しだいに医療的支援を減らし、卒業できる環境をつくっていくことが大事だと思います。

もちろん、利用者さんには「具合が悪くなって話を聴いてもらいたくなったら、いつでも訪問看護の再開はできます」と伝え、安心感を与えることも忘れてはいけません。私自身、今まで、産後うつの方をはじめ、発達障害・統合失調症で就労支援につながって安定した方など訪問看護を卒業してもらった方がおられます。なかには、主治医が「もう少しかかわってもらったほうが……」と言われる場合もありますが、そのようなときは、利用者さんと主治医と三者で話し合うこともしています。

 

 

■病院との連携その① 病院スタッフへの報告・地域資源の情報提供を密にしよう

:利用者さんが急に具合が悪くなることはよくありますが、病院スタッフは危機感を持っていないため、肝心なときに連携がはかれず、対応に困ることがあります。危機感の温度差を縮めるためにどのようなことをしていますか?

藤森:地域でも病院でも利用者さん中心の話しあいができるようにすることが大切だと思っています。病院やステーション、相談支援事業所など多機関で連携会議をしています。当ステーションは都市から離れていて、精神科病院も救急医療を行っていないため、急激に具合が悪くなったときには隣町の病院にお願いしなければいけません。利用者さんの自己決定支援をしている間に、週末や夜間になってしまうこともあります。だから、どのような状況になったら誰に連絡するのか、どのように危機を回避するのかを、退院までの間に、早めに話しあっておくようにしています。みんなで一緒に考えられると、チームの信頼関係が構築され、いざというときにも相談しやすいですね。

:日常的には、どのような工夫をしていますか?

藤森:生活状況がきちんと伝わるように、医師や看護師に伝えたいこと、報告したいことを利用者さんと一緒にノートに書き、受診時に見てもらいます。また、「レスパイト入院が必要だ」「薬の量を変更してほしい」など、私たちがしてほしいことも、遠慮せずはっきり病院側に伝えるようにしています。

同時に、困ったときだけに報告したり頼ったりするのではなく、「このように対応してもらえたおかげで環境を整えることができ、症状が改善した」などのよい変化や、生活の中でできていることも伝えています。

中薗:根底に信頼感ができると、先生たちも頼ってくれますよね。悪いときばかりではなく、いいときもタイムリーに報告することは本当に大事だと思います。当ステーションは病院の電子カルテとつながっていてタイムリーに報告を共有できるからよいですが、1か月の報告をまとめるのはとても大変です。そこに費やす時間が多いので、もう少し効率的にできると、ケアが必要な患者さんの訪問件数も増やせるように思います。

:病院のスタッフは在宅生活の様子がよくわからないことや、地域資源を知らないから適切な場につなげられないということもあると思います。

ある利用者さんの通所の場について話しあったとき、医師から「ゆくゆくは他院のデイケアに通ってもらうといいのではないか」と提案されました。しかし、就労支援の事業所では、小さな集団で社会性を学ぶ場になる可能性が高いと情報提供したところ、対人関係の苦手な利用者さんには大規模より小規模のほうが合うかもしれないという話になりました。ですから、訪問看護師が病院で勤務するスタッフに、地域資源の具体的な情報や地域生活の状況をていねいに伝えていくことは、大切な連携の一つだと、改めて感じます。

 

 

■病院との連携その② 連携はさまざま――病院併設型の場合、独立型の場合

中薗:当ステーションの利用者さんは、約4分の3が同じ法人の病院を退院した方で、ステーションは病院の敷地内にあります。ですから、医師や地域連携室と連携がうまく取れていて、電子カルテ上でも、医師から「ここは気をつけてみてほしい」という指示があります。

法人の看護部としても、年1回、病院スタッフにも訪問看護ステーションでの研修を取り入れ、訪問看護に同行しているので、病院の看護師と訪問看護ステーションの看護師との連携がはかれるようになっていることを実感しています。また、地域包括ケアシステムも学ぶようになってからは退院前訪問も増えました。退院前カンファレンスに訪問看護師も参加し、地域生活へのつなぎもスムーズになり、連携することへの意識は高くなっていると感じます。

病院は24時間対応を行っていますので、夜、いつも電話をかけてくる利用者さんから電話がないときは、夜間管理の当直者が心配して訪問看護ステーションに伝えてくれることもあります。

:訪問看護ステーションが独立型か、病院併設型かによって違いが大きいですね。私も以前、精神科病床のある病院に勤務していました。そのときは、月1回、病院の医師、看護師、地域連携の担当医師、ケースワーカー、作業療法士、訪問看護師で連携会議を行っていました。

また、日常的には、朝のミーティングを看護部長室で行い、病棟の空床状況や入退院者を把握してから訪問に出かけ、訪問からは16時ころに戻って、全病棟を回り、医師や病棟師長にタイムリーに利用者さんの報告をしていました。報告書では書ききれないことを伝えることができました。また、退院の可能性がある人の面談もしていました。病院併設型ではそのような連携もできますね。

その後は、独立型のステーションで勤務していますが、病院と連携する際に、誰を窓口に連携するかということがとても重要だと思います。島根県出雲市の独立型のステーションで訪問看護をしていたときは、公立病院の連携窓口はケースワーカーでしたが、看護師と連携したかったので、外来看護師や地域連携室の看護師とも密に連絡を取っていました。民間病院の窓口はケースワーカーと退院調整看護師だったので、退院調整看護師と主にやりとりをしていました。

会議に外部の人を入れるかどうか、病院によって違うので、難しい部分もあると思いますが、退院支援委員会などに参加させてもらえるような体制を整えてもらえるように働きかけることは、とても大事だと思います。会議への参加は診療報酬では点数化されておらず、ステーションとしては経営的に厳しいですが、目先のことだけではなく、病院と連携することのメリットを考えて、なるべく会議に出る。そういう意識をもつことが大事だと思います。

また、私は退院前訪問には必ず同行させてもらっています。これも診療報酬は1回しか取れませんが、病院の看護師さんとつながるチャンスなので、大切にしています。

 

 

■病院との連携その③ ケースを通じた連携とシステムづくりの両輪で

中薗:開かれた時代になっているのに、やはり外部の人を入れにくい病院があるのはなぜでしょうか。壁があるのでしょうかね。

藤森:外部の人を招く必要性を感じていないのかもしれませんね。私もケースワーカーさんに「会議に呼んでください」というと、「どうしてですか?」と聞かれることがあります。ですから、訪問看護の実績をつくって、次も呼んでほしいと言い続けています。相談支援専門員が、患者さんが退院したことを知らないこともあるので、そういう連絡が来たら、その方の了解を得たうえで、必ず相談支援専門員に連絡して「民生委員にも連絡してほしい」と伝えるようにしています。

:地域側は「病院が呼んでくれない」と言うけれども、病院側も、「訪問看護ステーションに頼んでも来てくれない」というふうに思っているかもしれません。やはり訪問看護ステーションは、「断らないこと」が大事だと思います。

みなさんのお話を聞き、改めて、日ごろケースを通して連携することと、システマティックにやっていくことの両輪が必要だと感じます。

そのためにはお互いにまず信頼関係をつくるところからスタートすること。訪問看護ステーションは、病院スタッフが「地域生活は難しい」ととらえている患者さんにかかわって地域生活支援の実績を積み、信頼を得ていくことが、まずやるべきことではないかと思っています。病棟の看護師から「この患者さんは入院時、大変だったんです」という言葉を聞くことがありますが、そういう場合は特に、退院後も生活状況をていねいに連絡することが大事だと思います。

システムづくりでは、法律が改正されるタイミングがチャンスだと思います。2013年の精神保健福祉法改正で退院後生活環境相談員ができたとき、私は出雲市の独立型訪問看護ステーションに勤務していましたが、地域連携室長の医師とやりとりをし、病院に研修会を主催してもらいました。病院主催で行うことで、医師や病棟師長なども参加しやすく、地域援助事業者(ケアマネ、相談支援専門員)と顔合わせができたことは、とても大きかったです。

今回の精神保健福祉法改正で、これから入院者訪問支援事業なども始まりますから、各地域でそのような場がつくれるといいですね。

中薗:診療報酬で連携に関する取り組みが点数化されたら、お互いに連携に関する取り組みも進んでいくのかもしれませんね。

:次の診療報酬改定で、一般科で点数化されている「入退院支援加算」を精神科でもつけてもらうように要望する必要もあると思います。

また、訪問看護の制度は、寝たきり高齢者を対象にした看護サービスの提供によって発展してきたため、一見ADLが自立して見える精神障がい者への訪問看護の必要性は、世の中に十分に理解されているとは言い難い状況にあります。現在の制度では支援ニーズのある方に対して、必要な支援が届けられていないといった課題もあります。

ぜひ、精神科訪問看護に携わるみなさんには、「このような診療報酬が算定できたら充実したケアができる」など、率直な現場の声を、日精看に届けていただきたいと思っています。

 

精神科訪問看護ニュース

精神科訪問看護に関する大切な情報をお届けするニュースです(随時更新)

Vol.09(2022/02/23)「精神科訪問看護におけるストレスマネジメント」

 精神科訪問看護の現場で働く看護師は、常日頃よりストレスと戦い続けなくてはいけない代表的な職業です。また、最近では新型コロナウイルス感染症がストレス要因としてプラスされ、より気が滅入っている方が多いのではと感じています。

 ストレスにもさまざまなものが存在しますが、今回は不安、焦り、苛立ち、怒り、緊張といった感情を伴う心理的ストレッサーとその対処法について、主に私の経験をふまえてお話します。

 まず、訪問先の利用者からストレスを受ける場面で浮かぶのが、「罵声を浴びせられた」「身体的な暴力を受けた」「性的関係を迫られた」「利用者との関係がとれず介入方法が分からない」「夜間に緊急性を感じないコールが頻繁に鳴る」「訪問をドタキャンされる」「家族の過度な期待に困惑している」などが挙げられます。

 次に職場環境やスタッフ間におけるストレスとしては「咄嗟の判断を迫られる」「仕事上の相談相手がいない」「労働に見合った給料がもらえない」などがあります。その他「関係機関との足並みが揃わない」など他機関との連携についてもストレス要因としてあるのではないでしょうか。

 このような高いストレスが蓄積された状態を放置すれば、いずれはバーンアウトや看護場面での判断力低下に至る恐れもあります。

 ストレスマネジメントには、自身がストレスに気づき、これに対処していくセルフケアや管理職などの上司や先輩看護師に改善を求めるラインケアと呼ばれるものがあります。

 特に経験の浅い看護師ほどストレスに直面したときの対処が困難になりやすいと考えるのが一般的ですし、病棟で勤務する看護師と比較しても、自分で解決できそうにない問題に対しても一人で立ち向かわざるを得ない状況に陥りやすいという特徴があります。さらに言えば、訪問看護師はセルフケアで自身のストレスに気づいたとしても、ラインケアによるストレスマネジメントを受けることは容易ではありません。

 これらの解決のためにはスタッフ間のコミュニケーションを絶やさないことが大切です。

 私は、訪問看護という環境においてこの問題をいかにカバーするのかと長年工夫をしてきましたが、最近は新型コロナウイルス感染症が蔓延したのを契機にオンラインによるコミュニケーションが定着してきました。訪問看護でストレスを感じるような場面に遭遇した際にSOSをリアルタイムで出せるというのは現場スタッフの安心感につながると思われますので、スタッフ間の日常の習慣としてのコミュニケーションシステムを各々のステーションで工夫していただきたいです。

 最後に、ストレス蓄積によりメンタルヘルスを崩したり、それによって離職する等はぜひとも避けなければなりません。ステーションのスタッフ一人ひとりのメンタルヘルスを健康に保つためにも日頃からストレスマネジメントの組織的なサポート体制をつくることも然りですが、ストレスマネジメントに関する研修に参加し、自らストレスに対処する力を身に着けるように心がけるとよいでしょう。

高田修治
セノーテ訪問看護ステーション 統括管理責任者

Vol.08(2022/01/11)「WRAPと訪問看護」

 WRAP(Wellness Recovery Action Plan)とは、日本語では元気回復行動プランと訳され、アメリカの精神障害をもつ人たちによって作られたリカバリーに役立つツールです。

 精神科訪問看護をする中で、調子を崩すきっかけや、体が出してくれているサインに気付いていない方が多いとか、適切な気分転換活動ができていない方が多い等と気付いたら、このツールを使ってみるのもひとつの工夫かと思います。

 WRAPでは、調子を崩すきっかけになることを「引き金」、体が出してくれているサインのことを「注意サイン」と呼びます。この「引き金」や「注意サイン」に本人が気づき対応することで、精神的に安定した生活を送ることができると考えます。WRAPは「自分で作る自分の取り扱い説明書」であり、本人に合ったプランを本人が作ることが重要で、看護師は利用者の気持ちに寄り添いながら、見守り支援していくことが大切になります。

 まず、「元気に役立つ道具箱」と呼ばれる、自分の元気に役立つものに意識を向けてもらい、その中から「毎日すること」と「時々すること」に分ける「日常生活管理プラン」を作成し、元気の維持や回復に役立ててもらいます。そして、「引き金」や「注意サイン」に気付いてもらい、その時に対応するプランを立て実践してもらいます。同じように、調子が悪くなってきている時のサインや、危機的な状況になっている時のサイン、危機的な状況を脱した時のサインに気付いてもらい、サインが出た時の対応策を一緒に考えていきます。

 WRAPには「希望」、「責任」、「学ぶこと」、「権利擁護」、「サポート」という、リカバリーに大切な5つのキーコンセプトがあります。「希望」とは、夢や目標といった目指すものではなく、希望を感じること、希望の感覚です。例えば虹を見た時に「わぁ。きれい」と思う感情、このようなものが希望の感覚です。東北大震災の後、ある人が「雲ひとつない青空を見た時、希望を感じました」と言いました。これがWRAPでいう「希望」です。「責任」とは、自分が主体になることです。自分自身の元気と生き方に責任を持つことは、失ってしまった主導権を取り戻すことを意味しています。「学ぶこと」とは、適切な意思決定のために必要です。治療についてや暮らし方、人間関係や余暇活動等、自分に関して学ぶことが大切です。「権利擁護」とは、自分を信じ大切にすることです。自分の思いを自分の言葉で相手に伝えることは、自分を大切にするために重要です。嫌なことを「嫌」、したいことを「したい」と言えることが、自分を大切にすることにつながります。最後に「サポート」ですが、人はひとりでは生きていけません。相互作用の中で生きています。家族や友人、サービス提供者から効果的なサポートを受けていると、気分を改善する助けになります。そして最も価値のあるサポートとは、「聴くこと」と言われています。看護師は利用者の思いを、丁寧にじっくり聴くことが大切だと思います。

 訪問看護を始めたばかりの方から、「何を話していいのかわからない」という言葉をよく耳にしますが、<どんなことに希望を感じるのだろうか>、<主体的に生活できているだろうか>、<治療に参加できているだろうか>、<自分を大切にできているだろうか>、<サポーターは誰なのか>等、5つのキーコンセプトを意識しながら会話をすると良いと思います。そして<何が元気に役立っているのか>、<調子を崩す引き金は何なのか>、<体が教えてくれているサインは何なのか>等を問い掛けることで、利用者自身の気付きにつながり、本人主体の訪問看護になると考えます。

 WRAPについて興味を持ち、もっと詳しく知りたいと思われる方は、書籍がありますので参考にして頂けたらと思います。

河合正樹
訪問看護ステーション支援太

Vol.07(2021/11/27)「ケースミーティングのすすめ」

 みなさんの訪問看護ステーションや訪問看護部門ではミーティング、事例検討など、ケースに関する話し合いの時間をどれぐらい持っていますか?

 訪問件数が多くなかなか時間がつくれない、スタッフの時間調整が難しいなどの時間確保の課題によって、話し合う時間をつくれていないという実情がありますか?または、受け持ちの利用者さんのことを担当外のスタッフと共有するという意識がない、職場内で相談できる人や機会・場がないなどの課題がありませんか。

 ご本人の生活の場に出向いて看護を展開する訪問看護では、個別性や密室性も高く、その人が生きてきた歴史や家族の文化などがうごめく空間でのやりとりになります。その方が生活してきた歴史のなかで、今、利用者さんに何が起こっているか、目の前の事象をどう捉えたらいいかということは、ひとりの支援者だけで考えてもなかなか理解することができにくいのではないでしょうか。当事者理解のためには、客観的な視点や多方向からの視点が必要です。

 スタッフ間でのケースミーティングや事例検討は、利用者の気持ちに寄り添いながら希望に沿った看護が展開できているのか、担当スタッフは利用者をどのようにアセスメントして看護実践をしているのか等を担当スタッフの主観的視点と他のスタッフの客観的視点をすり合わせ、アセスメントを深めていくために必要です。また、利用者との関係性を深めることや、目標に沿った看護展開をするのが難しいと感じている場合等には、その理由について患者―看護師関係から紐解くためにも必要になります。

 そこで今回は、定期的にケースミーティングを行なうための時間の確保や、職場文化の構築、ケースミーティングを行なう利点など当事業所での工夫をお伝えしたいと思います。

 当事業所は、精神科診療所からの多職種支援を強みにしています。多職種支援をしている特性から、個別支援チームや事業所内、または関係機関と合同でなど、いろいろなパターンでケース共有をすることを大切にしています。そのなかで、利用者主体のかかわりを展開するために、本人の希望、客観的な情報の擦り合わせ、病状や生活のアセスメント、いま優先するべきことの確認などを欠かさないように意識しています。

 まずは時間の確保、場づくりの工夫ですが、この曜日のこの時間をケースミーティングの時間枠と予定に組み込み、意図的に設定するようにしています。あらかじめ誰がどのケースを提供するかも決めますが、緊急性によって検討するケースを直前に変更することもあります。訪問に影響が出ないようにケースミーティングの時間を決めて見通しを立て、議題を焦点化して話し合うようにします。また、それぞれの意見が出しやすい雰囲気づくりも大切にしています。なぜなら、話し合いの場が、責められる、怒られるというような心理的に負担な状況になってしまっては本末転倒になってしまうからです。

 ケースミーティングを重ねることの利点として考えられることは、
 ①時間を止めて話し合うことで、ケース理解が深まり、整理が出来、かかわりのアイデアが出し合えることで、本人に必要なケアが展開できる
 ②かかわっていないケースのことを話し合うことで、かかわっていない事例についても考えることができ、アセスメント力がつく
 ③かかわっていないケースのこともわかっていると、緊急対応時に活かせる
 ④スタッフの疲弊や抱え込み、孤立を防げる
 ⑤スタッフ間の関係性の構築につながる(スタッフのストレングスをお互いに理解できる、得手不得手を理解しあい、よいチーム支援につなげることができる)
この土台がしっかりできると、本人参加型のカンファレンスも積極的に行えるようになっていくと思います。

 コロナ禍では、なかなか対面で集まること、話し合うこと自体が難しいかもしれません。組織の規定もあると思いますが、何に気をつければ、感染リスクを回避できるかがわかってきた現在、工夫しだいで取り組める方法があると思います。日常の雑談のなかで、意識せずともやりとりできていたことがコロナ禍において難しくなったとき、当事業所ではコロナ禍だからこそ話し合う時間をつくろうと業務の組み直しをしました。人との距離をとることが当たり前の世の中になってしまいましたが、私たちの仕事で大事にするべきことを、今いちど考えながら、本人主体の支援が都度見直せるようにみなさんの現場でもケースミーティングの場を持つことを工夫してみてください。

加藤由香
医療法人小憩会 ACT-ひふみ

※以前のバックナンバーについては現在アーカイブ準備中です。後日アップしますので、いましばらくお待ちください

精神科訪問看護Q&A

疑問や困りごとに日精看の精神科認定看護師がお答えします(随時更新)

Q.01「利用者に不用意な発言をすることで精神状態に悪影響を及ぼすのではと思い、緊張してしまいます。コミュニケーションの難しさを感じています」

A.01

たとえば、うつ状態がつよい利用者は、思考の整理がうまくできなかったり、自責的になっていることもありますので、「頑張りましょう」という励ましの言葉は、逆に混乱を招くこともあります。「今まで頑張ってきたのに、まだ頑張らないといけないのか、頑張りが足りていない自分はダメだ」と受け止める利用者もいます。利用者の病気の特徴や性格、自己肯定感の低さなどから、言葉の受け止め方が、看護師の意図しない伝わり方をしてしまうこともあります。傾聴と共感を行い利用者のつらさを理解しようとする姿勢と健康回復に向けた協力者であるということを一貫して丁寧に説明し、態度で示すことが必要です。あまり堅苦しく考えず、人と人としての会話を楽しむことから始めましょう。

Q.02「ベテラン看護師しか精神科訪問看護はできないのでしょうか?」

A.02

多岐にわたる病態やさまざまな背景や社会的役割をもつ利用者への訪問看護は、ベテラン看護師でなければできないということはないと思います。確かに経験よって訪問看護師としての能力に違いはあると思いますが、大切なことは利用者の立場になって考えることができるか、利用者の価値観を尊重できるかということです。また、利用者のニーズをくみ取り、丁寧な看護援助に努めていくことで、必要な訪問看護を提供していくことができるでしょう。

Q.03「介護保険では訪問看護ステーションにおけるBCP作成を求められていますが、独自で作成するのはとても困難を感じています。サンプル的なものを示してもらえませんか?」

A.03

BCPの作成に当たってのガイドラインとひな形は、自然災害発生時・新型コロナウイルス感染症発生時のものが、厚生労働省のホームページに公開してあります。それを参考に事業所や地域の状況を反映させたものを作成されるとよいと思います。

たとえば新型コロナウイルス感染症では、ガイドラインの中に掲載されているフローチャートに沿って、事業所では誰がそれを担当するのか等を明記します。介護保険では感染対策委員を選出するようにも勧められていると思います。その人を中心に統括すると共に、感染者が出た場合の想定をし、市町村の担当者へどのような動きになっているのかをあらかじめ問い合わせて聴取しておくことが大切です。

自治体によって初動の時点で連絡する機関が違う場合があるので、必ず確認し計画に反映させておくとよいと思います。 あとは厚生労働省のホームページに様式ツール集もありますので、利用されるとよいと思います。

介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修動画|厚生労働省

※Q.04~15については現在アーカイブ準備中です。後日アップしますので、いましばらくお待ちください

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